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モカひまの沼に落ちた切っ掛けの話

 モカとひまりの関係性が気になり始めたのは、神絵師である熊本愛知さん(@kumamotoaichi)のイラストが切っ掛けでした。

 というよりかは、ガルパを始めた大きな切っ掛けが熊本愛知さんのプレイ配信で、且つイラストやプレイ配信等を先に見ていた後でのスタートだったので、ゲームをしながら「あ、熊本さんのイラストで見た(モカが夏服のひまりの胸をガン見してる絵が特に印象的だった)二人だ」とか思いながら進めており、他にも二人のライブの掛け合いの雰囲気だとかエリア会話でのわちゃわちゃした絡みだとかが好みで地味に気になってはいたんですが、バンドストーリーを頑張って解放していく中でついにアフロのバンスト1章を全話見られる状態になったことが大きな転機となります。

 という訳でアフロバンスト一章を読み終えた人相手が前提の話題です。というよりかはほぼほぼアフロバンスト一章の実況のような感じです。

 

 そんなこんなでさて、一気見できるよう取っておいた未読ストーリーをどんどん見ていくぞと一話を開いてみたところ。

 

――「(調子の良い発言をしたひまりに対して)そんなこといってるけど~ ひーちゃん、Aメロんとこミスったっしょー」

――「(ひまりをフォローするつぐの発言に乗っかるように)ひまりちゃん、ナイスベース」

 

 ……開幕直後から、ひまりをいぢめて愉しむモカが出てきました。  

 このファーストインプレッションからして『モカはひまりのことが大好き』という強い刷り込みを受けました。だってあまりにも好きな相手にする類のいぢめだったので……(突っついてわちゃわちゃした反応引き出す辺りとか特に)

 他にも、一話内でライブをやりたいという方向に話がまとまった時に、

 

――「また次のライブでも、ひーちゃんは感動して泣いちゃうのかな~?」

 

 ……笑顔でこの突っつき方(からかい半分、且つ実際にそうなることへの期待半分な感じの言い方~!)、そしてモカの求めている通りであろうわちゃわちゃした反応をしてしまうひまり……そんなやり取りを受けて巴は、「ひまりはモカにはかなわないな」なんて言って笑う始末。

 え、巴のそのリアクションということはつまり、青葉さんと上原さんはいつもこんなやり取りをしているの……? 誰もこの青葉さんの上原さん大好きっぷりには突っ込まないの……? 美竹さんと青葉さんの仲には突っ込むのに……???

 

 と、そんな初っ端の大いなる衝撃を引きずりながら話を読み進めて、ストーリーはひまりがお守りを披露するところまで辿り着くのですが、これが大きな大きな第二波となります。 独創的なデザインのひまり手製のお守りを見て絶句したメンバー、それを受けてのモカの反応です。

 

――「みんなの言いたいことをモカちゃんが代弁するとー……『マジ……?』かな」

 

 ……この言葉、一見して普通に貶していぢめているかと思いきや、どこか地味に引っ掛かるところがあります。

 というのも、『みんなの言いたいことを代弁すると』とは言っているんですが、『モカ自身がどう思うか』についてはわりかし濁してあり、初見の時にはもうかなり首を捻りました(というよりかは今も引きずって首を捻ってます)

 ええ……なにその、意見としてはストレートながらに主語をちょっと曖昧にしたり語尾を疑問形にすることで相手を大きく傷付けない様なクッション性があり、且つ実のところ自分自身の考え、真意は別にあるという風にも読み取れるような、あまりにしんどい言い回し……ド直球に忌憚のない意見を投げているに見せかけて垣間から優しさが窺える上に自分のことは殺してるとか、しかも伝えベタそうな他メンバーに先んじてそれを発言するとか……とても儚い……

 といった具合に、このたった一言だけでも結構な儚さがあるんですが、加えてその後の、お守りを受け取った時のモカです。

 

――「あたしはギターケースにつけとこ~。蘭はー?」

 

 ……笑顔で言い放ちます。やっぱり何一つとして嫌がってないです。え、儚い……。

 後々お守りのビジュアルについては魔術グッズと称する等、やはりアレと思っていることが分かる場面が複数出てくるものの、身に付けることについては一切の躊躇がありません(後々のカードエピソードにてとある理由から気に入ってもいることが判明します)。また、仮にも先述の通り『マジ……?』とか言っておいてなのに、この後のストーリーの中で失くしてしまった時には、普段の飄々としたキャラに反して必死に探します。儚い……

 

 それから、この後のストーリーの中で地味にそして密やかに儚い言葉が出てくるのですが、それが第14話、モカが蘭(とその後に巴)に口喧嘩を仕掛けるシーンの、ひまりに対する言葉。モカと蘭の始めた喧嘩の仲裁に入ろうとしたひまりに対して。

 

――「ひーちゃん、喧嘩の仲裁向いてないんだからやめときなよ」

 

 ……この言葉、蘭と一緒になって凄む様に言っているためかひまりはひるんでしまうものの、実際のところモカは何一つとして悪いことも怖いことも言っていません。だって、「喧嘩の仲裁向いてないんだからやめときなよ」って、ただの向き不向きの話……見方によっては制止という優しい行為……

 モカが親友の為に、敢えてその親友に喧嘩を仕掛けるという重い局面で、不慣れとはいえど蘭や巴相手にはそれぞれにちゃんと煽ることができている場面で、唯一ひまりには(問題となっている事案の直接的な当事者ではないにしても)そんな言葉しか出てこない辺り、モカがどんな風にひまりを想っているかが分かって儚いです。

 何というか、モカは普段ひまりのことを弄ったりいぢめたりはするものの、本当の意味で悪く言ったり傷付けたりとかはきっとできないんだろうなと思わせてくれるような、そんな一言でした。

 というか青葉さん、普段上原さんを弄ったりいぢめたりする時の言葉の後全てに『あたしはひーちゃんのそういうところ、大好きだけどね~』って少女漫画ムーヴな心の声入ってる節ありそうな気がします。だって青葉さん、欠点多い子のこと絶対大好きなので……(確信めいた仮説に基づく推測)

 

 そしてストーリーを更に進めたところでは、ひまりの顔を「パンみたい」と弄って愉しむモカが見られたり(モカが日常的に散財する程にパンが大好物なことを考えると意味深……)、ガルジャムのスタッフからバンドの代表者を呼ばれた際にはモカが一番に(一番に!)「……だって、ひーちゃん」とひまりに水を向けて、誰よりもひまりのことをリーダーと捉え認識している節を醸し出したりと、まるでボディブローの様にじわじわと効いてくるような感情の発露が度々描かれます。 

 そして、そんな複数のボディブローが存在する中で個人的に更なる衝撃を与えられたのが第18話での一幕、モカの「おしゃれでつけてるの~」という発言だったんですが、理由を書き出してみたらあまりに長くなったのでここでは割愛して、またの機会に書こうと思います。

 

 さてはてストーリーは進んでafterglowが無事にガルジャムでの出番を終えた後。またしても(またしても!)首を捻らざるを得ない行動をモカが取ります。ライブが上手くいった安堵から感極まって泣いてしまうひまり、そして蘭にかけられた御礼の言葉から再び泣いてしまうひまりに対して。

 

――「ひーちゃんはライブの度に泣くなあ。あ、写真とっとこー」

――「シャッターチャーンス」

 

 ……写真!? 撮ります!? 人の泣き顔を??? 普段のキャラに託けてとはいえども正面から堂々と……?

 そして写真を撮るということはつまり『形に残して見返したいもの』がイコールですよね……? 青葉さん、上原さんの泣き顔大好きなの……? もうこの日の青葉さん、夜ベッドで仰向けになりながらスマホで上原さんの泣き顔見返して笑みを零す場面とか絶対あるじゃないですか……?(強めの幻覚)

 ついでに1話での『ひーちゃんは感動して泣いちゃうのかな』発言の布石もここで回収している形です。儚い……

 

 そんな眩しすぎるシャッターチャンスからエンディングの第20話、ガルジャム楽屋から撤収するところでまた、儚いシーン。

 モカが失くしてしまっていた、ひまりのお守りが出てくる場面。

 

――「見て見て~。なくしたと思ってた、ひーちゃんのお守りがでてきた~」

――「……あたし達のユウジョー、守ってくれたのかな~。このお守りが」

 

 ……『魔術グッズ』じゃないんですよね、この場面。『お守り』なんですよね。

 そして、守ってくれたのかな、の言葉に蘭が頷き、モカが微笑んだ後。

 

――「二人共ー! 行くよー!」

 

 こうして、ひまりが出てくるところがエモいんですよね。「行くよ」の言葉を携えて。

 お守りがどういう意味を持つのか、ひまりが如何にして『リーダー』なのかが、この場面に凝縮されているような気がします。

 だからこそ、それに対するモカの返事。

 

――「はーい」

 

 ……笑顔で返したこのたった一言に、いったいどれだけの感情が詰まっているのか。

 察するに余りあります。儚い……

 

 ラストシーンも、いつも通りの号令をいつも通りに失敗するひまり、その失敗を嘆くひまりに対して、

 

――「ここは『いつも通り』でいいと思いまーす」

 

 と、他ではないモカが言って締め括られるところも儚かったです。

 

 そして、バンスト一章本編はここで終わりなのですが、こんな本編以上に沼な後日談カードエピソードが存在します。

 それが、初期星3ピュア属性ひまりのカードエピソード:『モカとひまり様』。

 これこそ全人類の一部(弱気な言い方)がモカひま沼真っ逆さまの凶悪エピソードであり、表題通りモカとひまり二人のお話しです。

 このエピソード、儚くない言葉が全くと言っていいほど存在しないため、ここから下は9割方のネタバレを行うことになるので未読の人は注意が必要です。

 

 さて、場面はモカとひまりがつぐの実家たる羽沢珈琲店で、注文のケーキがテーブルに運ばれてきたところから始まります。つぐの家ながらに、ひまりが目の前のケーキに対して「つぐから聞いて、ずっと気になってたんだ〜」と言っている辺りつぐもシフトの都合のためかいないらしく、本当に二人きりです。

 そして第一の儚い言葉、ケーキを見てかわいい〜!とリアクションをするひまりに対する、モカの発言、ひまりの返事。

 

――「ひーちゃんって、こーいうの好きだよね~。次は、食べるのがもったいない! って言いそ~」

――「あはは、バレた? でも、食べないほうがもったいないもんね!」

 

 青葉さん、幼馴染相手とはいえ趣味嗜好並びに行動パターン把握し過ぎじゃないです? 大好きなの……?

 そしてそれに対して笑いながら「バレた?」って返すの、本当仲良し感あって儚い……

 

 そんなやりとりを繰り広げながらも早々とケーキを頬張り舌鼓を打つ二人、いくらでも食べられちゃうというひまりの発言に対するモカ

 

――「……たくさん食べたら太るよ?」

 

 直球です。忌憚の無さすぎる言葉です。

 エリア会話でも朝ご飯食べ過ぎたひまりに「あんまり食べると太るよ」と言おうとして「言わないで!」と遮られたり、ひまりに悪魔の囁き(ケーキセットの購入促進攻撃)を行う場面があったりと、モカからのひまりに対する体重への言及は鉄板の弄り感があります。

 ただしかしながらに、後々の学食ビュッフェ化イベの際にはひまりの過度の体重増加をモカが心配する場面がカードエピソードで見られたり、この場面でも即座に違う話題を振って気に病み過ぎないようちゃんと配慮している感じです。

 言いにくいことをはっきり言える間柄も儚いながらに、忌憚のないように見せかけて実のところ気を回しているの、想いの大きさが垣間見えて本当駄目です……

 

 そしてまた、モカが即座に振った違う話題、次の練習日のことについてのことから出てきたモカの発言。

 ひまりから聞いたばかりの練習の予定日を、「今ちゃんと覚えた」と豪語するモカを心配したひまりに対して。またそれを受けてのひまりの反応。

 

――「心配なさるな。モカちゃんはこう見えて、記憶力いいのである」

――「それは否定できない……っ! モカっていつもボーってしてるけど、テストの点いいもんね」

 

 これはある種の伏線であり、引いてはモカの人となりを指す言葉でもあります。

 重要ですがあくまで伏線故に、ひとまず置いておきます。

 

 そして、そんなひまりの反応に対する、モカの言葉です。

 『モカちゃんはやればできる子だからね~』とか調子の良いことを言いながら、不意に次の発言に繋げます。

 

――「それに、ひーちゃんから、お守りをもらってから、すっごいんだよ~?」

――「なんと、あのお守りのおかげで、テストで100点連発! 身長も30センチ伸びました! 宝くじも当たって、人生上向きになりました!」

――「それもこれも、すべてひまり様のおかげです。はは~」

 

  めちゃくちゃ弄ってます。楽しそう。

 ただ、弄っているながらに、前触れなくお守りの話題をする辺りがどこか意味深で、尚且つこの後のモカの言葉を鑑みるに、これもある種の伏線のようなものと言えます。

 伏線故にさておいて、それを受けたひまりの反応はというと、

 

――「も~、からかわないでよ! 成績はもとからよかったし、身長だって、全然のびてないでしょっ!」

 

 おそらくはモカの期待通りにいつも通り、わちゃわちゃした反応をしてしまいます。

 そして、このひまりの反応に対するモカの行動がとても儚いです。

 

――「いやいや、こー見えてすっごい伸びてるから。ひーちゃんのつむじだって丸見えだよ~。うりうり~」

――「わわっ、頭なでないで~!? 髪がぐしゃぐしゃになっちゃうってば!」

 

 ……青葉さん? 青葉さん?? いったい何をしているんですか……?

 ひょっとして、上原さんの頭を撫でていらっしゃいます……?

 上原さんの? 頭を? 撫でていらっしゃる???

 ……???

 と、急に混乱に陥れられるんですが、この直後のモカの言葉もまた儚いです。

 

――「どんな髪をしてても、ひーちゃんはかわいいよ?」

 

 『どんな髪をしててもひーちゃんはかわいいよ?』?

 青葉さん? ねえ青葉さん? それどういう意味で言ってらっしゃいます???

 ……いや、本当にどういう意味で仰っているんでしょう。

 もう思考放棄するレベルでど直球な発言なんですが、これに対するひまりの反応です。

 

――「えっ、そう!?  ふふ、うれしいな~」

――「……じゃなくて! モカったら、適当なことばかり言うんだから」

 

 ……一瞬だけテンションが上がるものの、適当なこと言われたとしてばっさりです。

 青葉さん、日ごろの行い故ではあるものの最早オオカミ少年

 果たしてどこまで狙ってのかわいい発言なのやらなんですが、天邪鬼で頭の回転の早いモカのことなので、この上原さんの反応まで込み込みの様な気もします。

 

――「む~。これでもひーちゃんのことほめてるのに……。モカちゃんの気持ちが伝わらないなんて、悲しいなー」

 

 適当と言われたことに対してこんな言葉を返してはいるものの、一体どこまで本気で悲しんでいるのか……

 とはいえ普段冗談や適当は言っても、真意を誤魔化す時以外で実は滅多に嘘を言わない青葉さんのことなので、真面目に受け止められないことが分かっていてそういう嘘のない言葉を、あたかも軽いことのような調子で発言しているような、そんな節も感じ取れる気がします。先のどんな髪型でもかわいい発言までも同様に。(どんな髪型でもかわいい発言については、後々の青葉さんのカードエピで本当にかわいいと思っていることが裏付けられるような発言も出てきたりします。儚い……)

 

 そして、そんな悲しいなー発言のすぐ後で、またモカが不意打ちで儚い言葉を零します。

 

――「……まあ、このお守りがあたしたちのユウジョーを守ってくれたってのは、ホントなんだけどね」

 

 ……ひまりに聞き取れないような声量で、そんな風に呟きます。バンスト最終話におけるそれと同じ言葉です。

 『は、ホント』という言い回しが前述のお守りもらってからすっごいんだよ発言に掛かっているであろうところから、ひまりの『適当なことばかり言うんだから』に対する返事がこの呟きがだと考えられます。

 これを、あくまでひまりに聞こえないように零す辺りが、青葉さん本当に青葉さんだなと思います。そういうところなんですよね本当……

 声が小さくて聞こえかったというひまりに対しては、

 

――「さ~て、なんて言ったでしょう?」

 

 とか返す始末で、本当にそういうところ……

 流石にやきもきした上原さんから迫られます。

 

――「質問で返さないで! そう言われると、余計に気になるっ。ね、教えて?」

 

 これに対して、モカは思案するような言葉を一つ置いてから、答えます。

 

――「んー、そうだな~……。歪な形をしてるし、ご利益なんてなさそうだけど、持ってるだけで、なんとなく落ち着くなって」

――「離れててもみんな一緒にいる気がして、なんかうれしい」

 

 ……この、初めの『んー、そうだな~……。』が、とても儚いんですよね。

 見比べれば明らかなこととして分かりますが、ひまりからの『なんて言ったのか教えて』という質問に対するモカの回答は、実際にした発言通りのものでは全然ありません。

 なので、きっとモカは『んー、そうだな~……。』という言葉の間で、ひまりからの問いに誤魔化さず答えるかどうか、答えるとしたらどのように伝えるか……ということを思索、ともすれば逡巡しているはずなんですよね……

 そして、その結論が上の発言です。

 ……儚い以外の語彙を見つけることができません。

 モカがお守りを紛失した時必死に探した理由の一つでもあり、またモカがお守りに抱く感情の最たる一つでもあり、尚且つ『ユウジョーを守ってくれた』という事実はひまりに秘めたままというこの伝え方、本当に青葉さん……

 

 この言葉を受けてのひまりは『モカがそんなふうに思ってくれてたなんて~』と、モカから『そんなにうれしいの?』と言われるくらいに微笑んで喜ぶんですが、モカからそう言われた際のひまりの返事が、

 

――「そりゃあそうだよ! モカが私をほめてくれることなんて、めったにないもんっ」

 

 ……青葉さん、普段……そうですよね……

 また、モカから褒められたことを殊更に喜ぶひまりがいる点も地味に儚いです。

 普段モカが褒めてくれないからということも勿論あると思うんですけど、それ以上に同カードのメモリアルエピソード(俗にいう右エピ)で、『私はみんなに比べて、出来ることって少ないから……』と置いた上で、モカについて『すっごく器用』と言及している場面があって、己に不器用の自覚がある上で誰かを器用と評するのはともすれば非常にネガティブなことだと思うんですけど、だからこそモカに褒められるのは他の誰かからのそれよりもきっと嬉しくて特別なことのはずなんですよね。

 一方で、当該のメモリアルエピソード:『みんなに作ったお守り』を読むと青葉さんの普段の言動がとても罪作りに見えるようにもなりますが、それは一度さて置き。

 

 そんな風に褒められて喜ぶひまりを見て、モカは言います。

 

――「そっかー。それじゃあ、今日はひーちゃんをたくさんほめてしんぜよー」

 

 これには、ひまりも感嘆符のあるリアクションが出ます。

 

――「ホントに!? 何をほめてくれるのっ?」

 

 前のめりです。モカに褒められるのが本当に嬉しいことが分かって儚いです。

 これに対してモカは、

 

――「えー、コッホン。それでは……いきまーす」

 

 こんな風にわざとらしく咳払いなりスタート宣言なりをするんですが、きっとこれも上述の『んー、そうだな~……。』と同じ思案か、ともすればはっきりと逡巡であると思うんですよね。

 モカは天邪鬼、言い換えれば傷つくことを恐れる臆病な心の持ち主で、素の自分をさらけ出すこと、この場面では素直に褒めること、にはきっと果てしなく勇気が要るはずなため、羽沢さん家のつぐみさんみたくスッと素直に相手を褒める言葉を出すことなんてできず、色々前置きをして自分でお膳立てしたり、先の展開を思案したりしないといけないんですよね多分。

 

 そしてここからがモカによるひまりへの褒め言葉になる訳ですが、余りにも儚い言葉の数々なため、儚い部分への言及は後回しにして一挙に書き出します。以下、モカとひまりのやり取りです。

 

――「ひーちゃんはいつも元気で明るいよね~。ひーちゃんがいるだけで、みんなも笑顔になれるよね~」

――「え~、そうかなー?」

――「おかし作りだって上手だし、頼れるリーダーだし、なんだかんだ、みんなひーちゃんに感謝してると思うよ~」

――「ふっふっふー。照れますな~」

――「意外と不器用な性格……あ、これは意外じゃないか~。そんなところもチャームポイントだと思うし」

――「ありがと……って、えっ!? 不器用……?」

――「あの『えいえい、おー!』も空気読めてないなーって思うけど、定番みたいになってるよね~」

――「あのー……モカ? それって、ほめてないような……」

――「ほめてるほめてる~。ひーちゃんが空気読めたら、ひーちゃんじゃないし? みんな、そんなひーちゃんが好きなんじゃな~い?」

 

 ……正直儚いポイント多すぎて書ききれないくらいなんですが、一番大きな部分に言及してみたいと思います。

 

 気になるのは、主語が往々にして『みんな』である点です。

『ひーちゃんがいるだけで、みんなも笑顔になる』

『みんなひーちゃんに感謝してると思う』

『みんな、そんなひーちゃんが好きなんじゃない?』

 ……『みんな』、そう思ってる。

 それじゃあ、モカ自身の考えは……? と、第三者視点だと思うところで。

 それは勿論『みんな』の勘定の中にモカ自身も含まれている(自分もまたそう思っていることの示唆)であろうとはいえ、だからこそ余りにも臆病さの窺える言い回しをしていて、儚くも罪作りです。ひまりは気付かずに喜んでいるけれど、結局のところモカは素直に褒めることはできていないんですよね……

 モカが珍しく『ほめてしんぜよー』とか言い出したのも恐らくはこのエピソードがバンスト1章の後日談である点から、その気持ちを持ち越してのことだと考えられて、上の方で伏線であるとして置いておいたモカが前触れなくお守りの話題を出したことも、これがひまりと二人きりの約束(他のメンバーが一緒にいると照れくさく話しづらい事柄)だからと、初めからそういう話をするつもりでいたのではないか?と邪推できるまであります(事実、モカが最初にお守りの話を出した時にはひまりも『ガルジャムのときに、私がみんなに渡したやつ??』と面食らっている(疑問符が二つ!)くらいには唐突)。

 それ故にきっとこれらのモカの発言に嘘偽りは含まれていなくて、全てがモカの本音に相当する言葉だと考えられるんですが、儚い本音ながらにそれなのにこの伝え方……青葉さん……

 野暮な行いとして褒め言葉の内容だけを抜き出してしまうと、

『いるだけで笑顔になる』

『おかし作りだって上手』

『頼れるリーダー(頼れるリーダー!)』

『感謝してる』

『不器用な性格もチャームポイント』

『空気が読めたらひーちゃんじゃない、そんなひーちゃんが好き(≒空気読めてない『えいえい、おー!』も好き……?)。』

 なのに、青葉さん……

 

 そして、折角のお褒めの言葉を微妙な感じに茶化され濁されてしまったひまりの反応ですが……

 

――「ううー……。うれしいけど、すっごく微妙っ! でも、ありがとうっ!」

 

 微妙と言いながらも、ちゃんと笑顔で『ありがとう』と言います。

 天邪鬼なモカの言葉を、余りにも素直に受け止めて。『ありがとう』と。

 

 そして、それを受けたモカは、眉をハの字にして、苦笑を浮かべながら。

 

――「……ここで素直にお礼を言えるのが、ひーちゃんらしいな~」

 

 零すように、呟くように、そう言います。

 これがひまりに届くような大きさの声だったのか、エピソードはここで終わってしまうため分かりません。

 

 しかしながらにそれよりも重要なことは、最後にこの発言が存在していることであり、この言葉によってこのエピソード:『モカとひまり様』におけるモカの言葉(少なくとも褒め言葉などはその全て)が、理性的に、故意に形作られたものである、ということが分かります。もしこの言葉が置かれていなかったら、ここまでの文章の大半が拡大解釈の4文字でちゃぶ台返しよろしく一蹴できてしまったくらいに重たい言葉です。

 というのも、『……ここで素直にお礼を言えるのが、ひーちゃんらしいな~』は、『お礼なんてまず返ってこないような言い方している自覚』がなければ出てこない言葉だからです(『ここで素直にお礼を言えるのが』なので……)。

 自覚があるということはつまり、反証的に『素直にお礼を言えないような褒め言葉』が故意に形成されたものであると断ずることができます。モカの一連の発言を故意ではなく『染み付いた癖でうっかりそうなってしまった脊髄反射的なもの』と仮定するには、発言の手前手前でちゃんと思考の時間が取られていて、余りにも理性的であり、無理が出ます(言葉を編集する時間をしっかりと取っている)。

 故意に理性的に、茶化して濁して、曖昧にしている。なのにお礼が返ってきた。

 そのことに対する、少しの呆れだったり、ともすればある種の敵わなさであったり、そういう感情があっての、『ひーちゃんらしいな~』だと思うんですよね。余りにも儚い……

 そして自分でお膳立てした局面でここまで素直になれないならば、普段のモカはひまりに対してどれだけ理性的に言葉を紡いでいるのか、というところまで想像するとまた儚いです。

 上の方で伏線としてさて置いていたモカの『記憶力いい』という豪語も、『ボーっとしてるけどテストの点いい』というひまりの評も、モカがただマイペースに生きているだけではなくて(マイペースにも生きているけれど)、実のところ地頭が非常に良く、ともすれば余計な気まで回してしまうくらいに多くのことを考えている一つの証左とも受け取れます(バンスト一章内でもそんな感じですが、後々のイベストやらカードエピやらで、実際にそうであることがもっと色濃く示唆されます)。

 

 とまあそんなこんなで、アフロバンスト一章並びにカードエピソード:『モカとひまり様』を読んで、対ひまりにおけるモカの秘めたる感情の大きさに打ちのめされたために沼に沈んでしまった訳ですが、その他諸々のイベストなりカードエピなりを解放していく内に、ひまりからもまたモカに対する感情がだいぶ大きいことに気付いたりして、二人の関係性は何だかとてもすごい感じです。

 ライブでの掛け合いに見られるような底抜けに仲良しな感じの関係もまた儚いながらに、どこかお互い水面下に好意の感情が大きく存在するところも儚いです。

 

 ところでこの記事内で儚いって何回書いたんでしょう。便利な言葉って便利だから便利で便利ですね。